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2014年2月24日 (月)

冬の鷹

冬の鷹
吉村昭著
この小説は、ターヘルアナトミアを翻訳した、前野良沢に焦点を当てた作品である。
吉村作品にちょっと凝り始めたよ。

著者らしい資料の渉猟と、緻密な推論が余すところなく語られる。

また、この翻訳によって名声を博し、弟子を多く取り、世俗的に成功していく杉田玄白との対比から、壮年期に仕事をともにしながらも分かれていく良沢の運命や人それぞれの生き方を考えさせられた。
前野良沢は、庇護者である両親を早くから亡くし、養子になりながら、中津藩の藩医としてようやく禄をはめるようになる。
そして、時代は田沼意次が権力に中枢にいる時期で、西洋医学が長崎を通じ、少しずつ巷間に浸透し始めた頃である。
良沢は、藩医として知識を得るため、長崎に赴き、そこで見聞きした事実から、オランダ語の習得の重要さを感じる。
年齢はは40台半ば。
ここから、「無理。止めた方がいい。」と長崎の大通詞の言葉に逆らうように、語学の習得にあたっていく。今と違って、パイオニアである。ロゼッタストーンを読んだシャンポリオンの苦労に匹敵する。
またそこで、オランダの人体の解剖の書、ターヘルアナトミアを目にし、まったく文章は読めないが、この人体の中の様子に衝撃を受ける。五臓六腑どころではない衝撃。
そして、刑死した老婆の解剖の見学。
同席した杉田玄白とともに、ターヘルアナトミアの翻訳を決意する。
その苦闘は杉田玄白の「蘭学事始」に詳しい。
そして、苦闘の末、「解体新書」と命名されたターヘルアナトミアの翻訳の出版にこぎつける。
幕府にも気を使いながらの出版だが、当時の医学界に衝撃と賞賛を持って受け入れられ、杉田玄白は多くの弟子を取り、成功していくのだ。
一方の前野良沢は、実は「解体新書」の執筆者として記載されていないのだ。
諸説はあるが、良沢は人付き合いが得意ではなく、翻訳が不完全で、出版を快く思っていなかったと考えられる。
ふーむ、ここからは吉村説が展開する。
吉村氏は、杉田玄白に対し、明らかに好意を持っていない。以降、オランダ語訳に興味を失い、やはり、出世の道具にしたという観点から見ているように感じる。
また、サブストーリーとして、平賀源内の生き方や高山彦九郎の生き方を展開する。
才気走り、大向こう受けするような道具立てを使い、耳目を集め、商売を展開する平賀を、著者は詐欺師扱いだ。
また、寛政の三奇人といわれる高山彦九郎との交流が描かれる。

オランダ語の翻訳にまい進する藩医と、勤皇の志士として、全国行脚をする高山にどういう共通点があったのだろう・・・江戸での定宿は、前野邸だったとのこと。
何か馬が合ったのでは?また、趣味の楽器が共通だったともある。
ほんとか?

うーん、おもしろいなあ。
最期、良沢は妻子とも死にわかれ、孤高のうち、82歳で死ぬ。ストイックなまでの学問へのアプローチ、情熱は本物だったろうなあ。
一方、杉田は、西洋医学を広める使命を感じた上での用意周到な世渡り上手で、こういう人物も必要なんだと思うね。
さて、俺は?
作家、童門冬二氏によると「人生起承転転・・・」だそうで、俺もまだ次があるよなあ。
彼によれば、伊能忠敬が理想だそうで、50で隠居後、日本行脚を始め、地図を作った。
さあ、俺も行く末を考えよう。
今は、本物と偽物が混在していて容易に見分けがつかない時代だ。

誰とは言わないが、某市長、某自称作曲家・・・
これからは、仮に稚拙であっても、磨いたものに光が当たる社会であってと切に願う。

・・・・・・・

そうだ!昔、NHKで「天下御免」という番組やっていたなあ。平賀源内が主人公だった。

そこで、このくだり、やっていた。

平賀源内は山口崇、杉田玄白は坂本九、前野良沢は内藤武敏、架空の人物小野右京之介は林隆三だったと記憶している。

ちがうかな?

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