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2012年10月10日 (水)

釣りの嚆矢

大昔のつりの指南書といったら、アイザックウォルトンの釣魚大全(1653年)ということになるのだが、これは時代がちょっと古すぎるし、国が違い、魚もなじみがないので、わからないことが多い。読んだけれど西洋版焚書坑儒に対抗するための政治の書のようにも感じたね。きっと歌に意味がある。汲み取れないんだが。

太公望のエピソードもちょっと伝わりにくい。軍人にして、最後斉の国の国王にまで出世。釣りを出世の道具にしたとの非難が。うーん、儒教と関係があるのだろうか・・・

図書館に釣り関係の本は少なかった。なんでだろう?
雑誌は「東海つり情報」のみ。
俺、「つり人」がけっこう好きなんだが。

そんな中、ちょっと興味深い1冊が。
「江戸の釣り-水辺に開いた趣味文化」長辻象平著

これはおもしろい!今の釣りのルーツが解き明かされていくようだ。
文献によると、相当昔から日本人は釣りに親しんでいたようだが、明確に資料があるとなると江戸時代からということになる。
釣りの嚆矢は江戸時代ということだ。当時の大都市、江戸で始まったといっていいと思う。なぜか?
まず、条件としては、江戸湾の豊かさがあったと思う。遠浅で淡水が流れ込み、さまざまな地形があり、非常に豊かな漁場があった。
そして釣りは当初、武士のたしなみとして成立してきたという話。
竿や糸は弓矢の製造技術に密接に結びついているし、世が太平になってきたら、大名で釣りを楽しむものが出始めた。武芸を揮えないなら、その技術が違うものに転化していくのは当然のことだ。いつの世もどの分野も同じだ。軍需産業が重化学工業や自動車産業に転化したようにね。
釣りの記録で最古のものは、1659年、越後村上藩の大名松平大和守の日記に記された9月23日に行われたハゼ釣り大会の様子だそうだ。ふーむ、興味深い。
この日から、この大名は釣りにかなりのめりこみ、たびたび日記に登場する。ウグイ200釣ったとか、ハマグリを狙ったらアサリばかりだったとか、ちょっと!ご同輩!時空を超えた親近感だ。
そして時代はくだり、享保年間1716年から36年ごろまでの江戸の釣りを詳細に記した本「何羨録」。
著者は弘前藩の旗本津軽采女。江戸詰めになり、ちょっと不遇を囲いつつ、人生を楽しんだのかな?
これはもう本格的な指南書である。ポイントから仕掛けから。これも興味深い。
俺は、江戸前のアオギス釣りに興味がある。今のシロギスとはちがうが尺を超えるようなキスである。もはや東京湾では絶滅した・・・
遠浅の海に1尺半の高下駄と、カレイなどつくためのもりと杖をかねた「やすつえ」を道具に、かなり奥までたちこんで、釣りに興じ、この激烈に引くというアオギスを狙う。やってみたかったなあ。
そして、天下の愚策、生類憐れみの令の発布の15年間の暗黒時代を経て、この釣り文化は、庶民のものへとなっていく。
老若男女、大いに楽しんだ記録もあるし、北斎の浮世絵や歌麿の美人画にも釣りに興じる人物が多く描きこまれている。
印刷物も今と同じぐらいで、釣法指南書から秘密のポイントの暗示まで、人間って進化しないのかも・・・というべきアイデンティティだ。
江戸で始まったこんな釣り文化は当然地方にも波及する。有名なのは庄内藩の釣り文化で完全武士のたしなみで、「名竿は名刀より得がたし」という言葉のとおり、こぞってクロダイ釣りに走ったそうだ。
うーん、どういっていいか・・・
そしてもっとも趣味的で日本的だと思うのは、タナゴ釣りだ。
5cmにも満たないこの小魚は、産卵期になると非常に美しい婚姻色をまとう。
これを極繊細な仕掛けで釣り上げ、飼育しながら、いかにきれいな発色をさせるかを楽しむという文化だ。
現在も魅せられている人は多いし、この文化は江戸時代から始まったのか・・・さもありなん。
この道具の繊細さや螺鈿を施した道具箱など、もはや芸術品である。
まさに、日本。
なんだか、本当に江戸時代に興味がわいてきたね。「明察」効果かな?

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コメント

当時は今よりももっともっと試行錯誤があったのでしょうね

魚はたくさんいたと思います。
仕掛けは、原型は変わらないですね。人間はすごいなあ。

私がいつも行く図書館は、釣り関係の本はたくさん並んでいます。
ウォルトンも見かけたような。。。
石器時代の遺構からも、釣り針が出土していますから、人間は大昔から釣りをして魚を獲っていたんですよね。
釣り針というと、神話の「ワダツミイロコの宮」を思い出しますね。
それと、子どもの小学校の教科書に載っていた、立松和平さんのお話しも。
ヘミングウェイの小説にも、釣りが出てきていたような気がします。

きよっちさん、太古の鹿角の釣り針、試してる人がいるらしいです。
これが効くらしい!鉄製にはない何事かがあるらしい。仮説は後日アップ予定です。
つりの文学も結構ありますねえ。
でも、泊りがけで行った宿で出る、釣りの師匠たちの不思議譚が原点かなあ。
釣をめぐる文学も楽しみたいですね。

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