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2012年9月16日 (日)

美食の成立

小泉武夫先生の本は、有益で示唆に富むなあ。
「人はこうして美味の食を手に入れた」

図書館で借りてきた。

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あらゆる国家、民族の料理を食べ、感想を書き記し、さらに深く考察を加えた論理を展開してきた、この醸造学の泰斗が、美食の成立といったときに、何を第1章にもってくるか?
韓国のエイの塩漬けのホンオか?イスラム圏の羊の脳みそか?中国の宮廷料理か、と思っていたが、以外にも、能登半島に伝わるふぐの卵巣の粕漬けだった。
確かに、猛毒のふぐの卵巣を食べようと思ってしまう人間の知恵と奥深さに頭が下がる。
ふぐが捕れたとき、この猛毒だが、つやつやと大きい、この部位を何とか食料に回したいと思うのは、救荒的なニュアンスもあったかと思うが、生物としての人間の本質なんだろうと思う。
この部位の毒の主成分はテトロドドキシンで、1匹分で軽く20人の致死量にあたる。ひえ!
それを、丁寧に洗い、1年以上塩水につけ、毒を水に溶かしたあと、酒粕につける。
すると、微生物が残った毒を更に分解し、テトロドドキシンを完全に水や二酸化炭素に替えてしまい、残った卵を食品として成立させてしまうのだ。それも相当な珍味、美味なものとして。
この発酵という料理法こそ、人類が編み出した、究極の料理かもしれないねえ。
おそらく何人もの人が、この卵巣の料理の過程で落命したに違いないし、今みたいに成分分析や化学記号を知ってたわけではない。
どういう理屈からこの手法を学び、伝承し、成立させてきたのかを考えると、呆然としてしまう。
確かにこれは、小泉先生の美食論の第1章を飾るにふさわしい。
で、味は?
先生によると、お茶漬けが一番とのこと!
ほぐしてご飯に乗せた卵巣に、熱くて濃い煎茶をざっとかけ、ずずっとすすると、粒つぶした感触と奥の方から響いてくるようなふぐの風味と、どこか懐かしい感じが沸きあがってくるそうで、食べたことないのに伝わってくる!
さばの粕漬けのへしこという食べ物がある。俺はこれがすきなんだ。御器所のなんやさんで食べられる。
へしこのうまさは、たんぱく質がアミノ酸に分解したうまさだと思うし、このふぐの卵巣の味の想像の手がかりとしては、結構有効なんじゃあないかな。
魚を漬けるという発想は、海洋民族である日本人の面目躍如たるところだし、こういった食文化は絶対に伝承すべきだと思うよ。
秋田のしょっつるもそうだし、石川のいしるもそうだし、沖縄のスクグラスだってそうだ。
この文化は北から南まである。
またまた、小泉先生に教わったなあ。

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コメント

なんでも初めに食べた人ってスゴイと思いますね。
毒キノコでもトリカブトでもみんな先代の犠牲があって今に教訓として活かされているのでしょう。
でもボクはパイオニア役はご免ですね(笑)

あります。河豚の子の粕漬け。うちの冷蔵庫の肥やしです。
2010年11月に輪島朝市で買いました。前日宿で食べたものが忘れられず、これを買いに朝市へ行ったようなもの。
朝市のおばちゃんの話では、製造にすでに足かけ3年かかっているので、冷蔵庫で保管すればまだ数年持ちます。(表記はできませんが・・)
ってことで、今夜あたりまたたべようかな。

子どもも私も、小泉先生のファンなので小泉先生が出演される番組は、親子でジ~っと見てしまいます。
次に図書館に行く時は、私も小泉先生の著書を探してみます。
今年の2月頃、塩麹が流行し、お店から消えてしまうほどでしたよね。
あの時私は乾燥麹を手に入れて、10日ねかせて塩麹を作りました。
安い鶏肉も美味しくなって驚きました!
フグの卵巣の粕漬け、犠牲を伴う試行錯誤の末なのか、それとも偶然の産物か、ルーツを考えると一層有り難く思えますね。
意識して見渡すと、日本人は発酵食品の恵みをた~くさん受けていることに気付きます。

あっ 失礼。うちのは「粕漬け」じゃなくて「糠漬け」ね。

OJさん、食のパイオニアかあ。おれなりたいかも。
ほんと小泉さんの本は目からうろこがぽろぽろ落ちるんですよ。
ベニテングタケを食う話は、白戸三平だったかなあ。めまい寸前の満足感という表現があった。興味津々。

SINOさん、SINOさんちは何でもあるねえ。
能登半島はぐるっと回ってきたことがあるのですが、これは意識に上らなかった。
いしると刺身を覚えてますねえ。
食べたら感想聞かせてください。

きよっちさん、塩麹俺結構気に入ってます。でも、使い方よくわかってないなあ。
小泉先生、おもしろいですよね。
魚食と発酵の文化は日本人の大元かもしれないですねえ。
国家の品格も読み直してるんですが、砂糖まみれの輸入品食うなら、高くても国産発酵系食品を食うべしと力みたくなってます。

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