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2012年6月27日 (水)

本望と悔恨2 ~デルスによせて

黒澤明監督の作品に「デルス・ウザーラ」という映画がある。
他の作品とはちょっと毛色が違っていて、舞台が極東ロシアのアムール川周辺、ウズリの森と称される一帯である。

地質調査のために、かの地に派遣された探検隊の隊長、ウラジミール・アルセーニエフが、厳しすぎる自然に凍死寸前まで追い込まれるが、現地の猟師「デルス」に助けられ、雇うことにする。行動をともにするうち、彼の持つ深い知恵と知識に次第に魅了され、深い友情を結んでいく話で、実話で同名の本が上梓されている。
俺はこの映画、黒澤作品の中で一番好きかもしれない。

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ネタばれはいかんと思うが、もう少し書くと、そんなデルスも年齢による衰えを隠すことはできない。目が衰えてきたのだ。厳寒の密林はそれを許すほど甘くない。次第に猟に失敗する率が増え、最も恐ろしい敵、アムール虎の幻影に悩まされることになる。見かねたアルセーニエフは、ペテルスブルグの自宅につれて帰る決意をし、天涯孤独の猟師だったデルスが都会暮らしをすることになるのだが、あまりの違いに、精神に異常をきたし始める。限界を悟ったアルセーニエフは、ウズリの森にデルスを帰還させることにしたのだ。目のことを考えて、自動照準の最新式ライフル銃をデルスに持たせて・・・これが、最終的な悲劇を呼ぶことになることも知らず・・・

まとめると「文明と自然の衝突」がテーマで、平たく言うと「良かれと思うことが裏目に出る」というモチーフでできた映画だと思う。
本来厳しい自然の前で、人間は孤独と死と隣りあわせで生きてきたのだ。
人間は、少しずつ、文明を作り上げ、快適空間を作ってきたが、ひとたび猛威にさらされればひとたまりもないのが本質である。良かれと思ってやっていることが、自然の前で完全に覆されるか、無意味であることをこれまでにずいぶん経験したはずだ・・・でも忘れてしまう。3/11を出すまでもなく・・・

俺は師匠にプレゼントした1本の渓流竿が、デルスにあげた最新式自動照準の銃に思えるときがある。
日本の大自然である渓流という場所に、誰しもが訪れる年齢という衰えを補うつもりの道具が、逆に性能が高すぎて裏目に出てしまったのではないかと。これがあれば、今まで糸を切られていた大物とも渡り合えると思い、師匠の持っていた当時の運動能力を超えてしまったのではないかと。
誰しもが衰える。
ならば、うちでおとなしくしておれ!ということなのか?
いや違う。しかし、危険が大きくなることは覚悟しなければならない。
撤退する勇気、自然への畏敬を忘れてはならないが、突入することも本望なのだと思う。
デルスもあの自然厳しいウズリの森への望郷の念は強かった。
でも、どのような形であれ、師匠には生きててほしかった・・・
本望だったのか?自分は今でも悔恨に揺れている。それを確認しに、また、本当のことを知りたくて、形見分けで俺の手元にやってきたこの竿をもって水量りに行くのである・・・

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コメント

老いは誰もが経験する事であるし受け入れなければいけない事実です。
その覚悟は出来てるけどやっぱり少しでも先延ばししたいですね。

大物をかけたとき、転んでしまったところに自分の衰えを感じたのです。
いつか負けるときが来ると思いました。
でも、人間はそうでないければならないのかなあ。たくさんの道具で自然と対峙してますが、素になるとあまりに弱い・・・

たしか試写会で見た。妹・弟とともに母に連れて行かれた。公開の時すでに中3か高1だったから、それでも親に連れて行かれたのは・・墓参りのような、子どもが断りきれない意気込みが、「これは子どもに見せる映画」ってのが母にあったんだと思う。
それで、感想はo1211さんとほぼ同じ、デルスが老いてゆく様子が新鮮だった。

sinoさん、おれも公開当時、映画館で見ました。友達といったと思いますが。
いまだによく覚えています。
デルスの死が印象的で、映像美とともに考えさせられましたね。
映画も俳句と一緒で受け取り方はいろいろで、解釈が心の中で育っちゃうんでしょうね。

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