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2012年6月26日 (火)

三匹のおっさんリターンズ!!!

まわし読みの会、「三匹のおっさんふたたび」読了。

3

作者のあとがきでも「彼女を主人公に書き始めたかった。」とあったが、第一話、キヨの長男の嫁がまず主人公。
近所のコロッケが評判の精肉店にパートで就労。そこでの人間関係や金銭の貸し借り、もめて最後はやめてしまうのだが、リアルに読める。
女子の理屈は強烈だなあ。この理屈は俺にはまったく埒外のことで、さすがのキヨも手も足も出ないが、嫁は社会にもまれて成長を見せた。結局はタフだ。ぽっきりなるのはやはり男だと思う。
今作は前作よりリアル感が増した。
町内の小悪事を解決するということであるが、実はこの小悪事が、現代日本の状況に深く結びついており、ちょっとやそっとではなんともならないことを知ることになってしまうが、彼らはあくまでさわやかである。
万引きして上っ面だけの反省文を書く中学生、駐車場にごみを投棄し、処分代は金持ちが負担すべきと開き直る老人、祭りの協賛金を拒否しつつ、お菓子の受け取りを要求する町内会、退職後、高飛車な越権行為をする素人自警団、技能を持つおっさん達とは能力が違うが、周囲は見抜けない。
おっさん達は、たじたじとなるが、地域と連携し、よく奮闘していると思うよ。ただ、根が深く、おいそれとは解決できない。
今回は、エンターテインメントと文学性というテーマを考えさせられた。
それは、その時代を生きる人々が持っているアイデンティティに、エンターテインメントこそ無縁ではないし、かりに私小説であってもそうだということだ。
戦後文学は、戦争という巨悪に対峙したが、推理小説や大衆小説においても犯罪のモチベーションが心の傷だったり、異様な上昇志向だったり、ああ、あるあるといったものがないと説得力を持ち得ない。
俺の感覚では、この説得性が文学ということなんじゃあないかと考えている。
その意味において、この小説は、こういうことはあるなあという説得力がすごくあるし、主人公に思い入れることもできる、深い文学性を持つエンターテインメント小説だと思う。
この中の偽三匹のおっさんの話など、マーチンスコセッシ監督のタクシードライバーを思い出した。
普通のタクシードライバーが、14歳の娼婦に入れあげて、精神に異常をきたし、自らが救世主と信じ始め、彼女の周りにいるチンピラ、ジゴロ、客引きたちを有無を言わせず、殺していくようになってしまう話なんだが、何が怖いって、彼がマスコミによって児童虐待からいたいけな少女を救うヒーローに仕立てられ、本人もまたそれを信じ込み、正義を行ったと思うようになってしまうことだ。
かの国は病理がここまで深い国だと薄気味悪い思いがあったが、ここまでではないにしても、高飛車な自警団などは論理がそっくりである・・・
この国もいよいよ・・・
そういう意味で、現代を鋭くえぐっているし、この着目した視点の精度の高さは抜きん出たものがあると思う。この作家、筆力がある!
ただ、もうちょっと息抜いて読めればなあと思った。リターンズは、カタルシスを楽しむというより、腹にずんと来て、ほんとに考えさせられたよ。

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コメント

今回もまた「なるほど」ですね。後半にo1211論が・・きっちりある。

こないだとは違う本ですか?
本屋に並んでいるのを見てただの文庫本と単行本の違いかと思っていました。
どこの本屋にもしっかり目立つ位置に置いてありますね。

sinoさん、この作家、すごいモラリストで、「複合汚染」を書いていたころの有吉佐和子を思い出してしまいました。文章がうまくて、ライトノベル出身ということですが、骨っぽいなあ。
一月前の俺は理屈っぽいなあ。ああ、ずっとかあ・・・

ojさん、続編ですね。話が込み入ってきましたね。でも、つぼがしっかりおさえられてます。
なぞときあり、さわやかな若い恋愛あり、児玉清一押し作家です。
児玉清関連でル・カレという作家を読もうと思ってます。

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