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2012年4月 9日 (月)

フェルメールへの旅

ちょっと前に名古屋市美術館にフェルメールの絵が来たね。「地理学者」。

非常に印象的で、このオランダの画家を愛好する日本人も多いかと思う。色使いや構図はシンプルなんだが、深い表現力があると思う。光り輝く金色の服、真珠の耳飾、手紙を読む女性の表情など。陰翳に富み、今にも動き出しそうな写実性だ。大概、部屋で左から光が差してくる。
で、こんな新書を買ってきて、読んでみた。

フェルメール全点踏破の旅。朽木ゆり子著

Photo_4 

おもしろい。
現存するフェルメールの絵画は30数枚といわれており、そのすべてを見に行くジャーナリストのルポである。
この本によれば、日本人がフェルメールを愛好する理由は、宗教的な寓意が少ないからだということだ。納得できる。
確かに西洋絵画には宗教的な約束事が多く、判じ物のようで日本人には意味がわからない。たまねぎが淫蕩の証といわれても、なんじゃあそりゃ?としかならない。
フェルメールはそういう部分が少ないという側面が確かにある。
それは、宗教改革と関連していると指摘している。
オランダはカルバンの宗教改革の総本山であり、教会の打ちこわし運動が盛んだったところだ。
神との契約は個人が行い、教会はいらないという考え方に基づいているし、絵画に関して言えば教会がパトロンじゃなくなったということだ。
したがって、オランダにおいては、宗教的な偉人の肖像画や、聖書の場面などを描く機会は、仕事としても少なくなっていったと見るべきなんだろうね。
そこに取って代わったのが、近代の市民階級であり、富裕層だったということかな。
当時、オランダが、艦隊を引き連れ、あらゆる富を渉猟し、エネルギーに満ち溢れていたのは、日本とのかかわりを見てもよくわかる。富の蓄積が科学、芸術、思想などの勃興に大きく寄与し、奔流のような豊かな社会を形作っていたと想像に難くない。
フェルメールは、顕微鏡を発明したレーウェンフックと親友であったということだ。へえ、初耳。顕微鏡と絵画、必ずや影響しあっている。
で、肖像画の注文主は、そういった市民の富裕層であれば、宗教的寓意性とは離れるし、科学的思考が、鬼のような写実性に転化して当然という帰結になり、21世紀の東洋の島国の中高年男の心をもとらえるのだ。
この稠密な手法を工業的な量産体制ではなく、マイスターのように描きつづけたとしても、40数歳で亡くなってしまえば、このぐらいの絵画の量が限界だったのではないだろうか。
ルーベンスとよく比肩されるが、ルーベンスとは違い、工房を構えるという指向はなく、自らの健康状態や天命をそこはかとなく感じていたのではないかなあ。
フェルメールは寡作でもいいから、ひとり自ら作るという道を選んだのではないか?であるがゆえに、その作品は個性と異彩が放たれて光り輝いているのではないだろうか。
日本人のはかなさを愛好する資質と、細やかな職人的気質に絶対通じるものがあると思う。
俺は「牛乳を注ぐ女」と「デルフト眺望」が好きだ。この風景画はすごい。

Vermeer_milkmaid01_2

Vermeer13

庶民性と色の使い方。
アムステルダム美術館、ハーグ美術館もちょっと行ってみたくなった。

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コメント

画も時代背景を感じながら見ると面白いですね。
o1211さんを見てると趣味は無限と感じます。
趣味に「疎か」という文字は当てはまりませんね。

いやあ、そんなたいしたもんじゃないですよ。
風邪気味で動きが鈍いときは本を読んだり、楽器を弾いたりしてますね。
文章を書こうというのも最近ありますね。
まだ俺はなにかになりたがっているのかもね・・・・

(o^-^o)オランダは2000年にいったなぁ
クレラーミューラー美術館とゴッホ美術館は行ったよ

おもいだすなぁー

kuraraさん、毎年の恒例行事だったねえ。いい物見てるじゃん!
今度いったら写真と紀行文でもアップしますか?協力するよ!
南極か南米がいいなあ・・・アマゾン、パタゴニア、アンデス・・・キューバもいいねえ。音楽、酒、ヘミングウェイ、カストロ・・・自分で行けってか。

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