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2011年10月13日 (木)

回し読みの会、「風が強く吹いている」。

姉御の回し読みの会、三浦しをん氏「風が強く吹いている」。

箱根駅伝の話。

寛政大学という大学の近くの竹青荘というぼろ下宿の学生が、箱根駅伝をめざす成長譚。

導入、プロットはありきたりな感じだが、キャラクターの立ち方、心理描写は凄腕だなあ。

突出した走る力を持つ蔵原走と竹青荘住人10人のチームを作り上げてしまう清瀬灰次を中心に物語は進む。

作者のモチーフに横たわるのは、「強さ」「頂点」とはなにか?到達しないことがわかっていてもなぜ人はそこを目指すのかといったことがある。

かなり取材している。インタビューや練習、試合などつぶさに観察して、肉体との対話、感情の動きを、リアルだ、と思わせるほど描きこんでいる。

「才能」とは何か?これは、ちょっと考えてみたいテーマなんだが、ここでは、人のあり様を考えたい。

向き不向きは、個性という括りでもいいが、人には必ずある。だが、向いてはいないがその行為が好きという部分もある。

竹青荘住人10人は、清瀬灰次君の眼力によって、長距離走にほどほどに向いていて、自分で気がついていないが、走ることが好きになることがわかっているタイプの青年ばかりだ。

蔵原走は、向いているというか、彼の人生が長距離走そのものといっていい。一方留年生、にこチャンは、体もごつくなってしまい、不摂生もたたって、ランナーではなくなっているが、大変な生活能力の持ち主だ。禁煙のつらさから手慰みに作った、針金の人型を魔除けとして売ってしまうほどだ。

その彼らが、箱根のランナーを目指す。

蔵原走は、報われることを求めていない。速く走ることでもない。「強さ」「頂点」を何か見つけるために走るのだ。

そして、「強さ」「頂点」は箱根で優勝することではないんだということに最後気がつく。にこチャンも誇り高く走りぬき、プロセスの意味を知る。

俺はそう読んだ。

作者は、寝食を忘れて取り組んで、倦むことを知らない、人の不思議さにすごく関心を持っているように見える。ご自身は小説を書くことに、倦むことを知らず取り組んでおられるが、長距離を走ることに、倦むことを知らない人たちのことを知りたがっているように見える。

特に、負けることがわかっていても格闘する意義をどこで見出すかを知りたがっていると思う。すごく根源的な問いかけであり、俺は格闘している連中を、いいなあと思っているし、うらやましくもある。燃え尽きろ!バキバキにやられながらも、それに没入すること。生き方のひとつでもある。

うちにも若干1名いるなあ。あの練習量は只者ではないが、それで生計を立てるとか、有名になるということのための行為ではないのだ。なにかを求めているのだ。見えないものを見に行っているのかなあ。

今の俺は、ニコちゃんの気分だぜ。俺も誇り高く、「強さ」「頂点」を見に行くぜ。

解説は「絶対音感」の著者、最相葉月氏、これも人の変った能力を扱ったものだ。人の不思議さを思わざるを得ない。

この小説も映画化された。林遣都君が主人公。姉御はこういう映画がお好みだノウ。

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コメント

やり続けていると初めて見えてくる世界ってありますね。
優勝することだけが目的なら半分以上の者は途中で諦めるでしょう。
スポーツに限らずブログでもそうかも・・。

続けることによって得られる心のありようと肉体、技術の洗練さが人に共感を呼んだり、感動を与えたりできることの重要な要素なのかも。でも向き合い方を間違えると、おかしくなりそうなので、人の意見をきかないとだめだなあとも思う。
俺まだ向上したがっているね。

「強く」吹いているところがミソなのでしょう。日本人誰もが好きな「箱根」を題材にしているところが上手い。そのうち読みたい1冊にリストUPだな。

sinoさん、読んでみて。本を読んで感想を言い合うのも、大人の楽しみだなあ。
三浦しをんいいよ。一見軽いが深い。

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