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2011年8月17日 (水)

大人の宿題。夏の読書感想文

ということで、俺も読書感想文を。

西村健太の「苦役列車」。

去年の芥川賞受賞作家の新作である。

これは、もろに私小説の系譜である。田山花袋の「蒲団」とか嘉村磯多の一連の小説の読後感に似ている。ほとんど自虐的といっていいほどの独白は、実体験と思わせる。性犯罪者の息子という設定で、貧困、いじめ、ドロップアウト、日雇い暮らし、その労務者の運搬車両で出会った専門学校生との交流とその破滅といったストーリーで、閉塞感に満ち満ちている。ある種のむき出しの真実を、ずっと目の前に差し出された感があって、作者の血まみれのぴくぴく動く心臓を見ているように思った。てだれの読み手には、これぐらいの刺激がないとだめなのかも。これは現代社会の一面を描くことにおいて、私小説という方法がいまだ有効といえることに成功している。巧まざる主人公の動きが告発にも近い叫びでもあるし、みじめな心情をえぐることによって、読み手の心のバリアに衝撃を与えてくる。周囲の人間、社会的環境を避けずに直視し、君には何かできるのか?あるいは、君はいったい何者なんだ?とね。

悪くない。でもちょっときついなあ。ちょっとは救済が欲しいじゃあないか。むき出しに手渡さずに、作者よ、何かヒントをくれ。

小川洋子の「人質達の朗読会」。

「博士の愛した数式」以来、ずっと気になっていた作家で、風変わりなシチュエーションと、俺には絶対思いつかないようなディティールの展開が、読後に効いてくる。

この作品はまず、設定が凝っている。

とある国で、日本人ばかりが乗り込んでいるバスがバスジャックされ、ゲリラに軟禁され、数ヵ月後、政府軍の奇襲攻撃で、全員が死んでしまう。その中に盗聴を担当していた政府軍のスパイがいて、彼がゲリラの動向を探るための録音していたテープが、現場で発見された。そこに録音されていたものの中に、日本語の小鳥のさえずりのような声が入っていた。それを解読するため聞いて見ると、それは、8人の軟禁された日本人が、一夜づつ、それぞれ自らの人生を語る朗読会だった…といった仕立てになっており、いつ果てるかわからない緊迫感とひそやかな独白が対を成し、否が応でも感情移入させられてしまう。八話の短編のような構成になっており、構成は、千夜一夜物語に近いが、その物語は、慎ましやかな日本人の、精巧な細工を施した織物のような美しい市井の物語で、心の襞をふっと焼き付けたような話ばかりである。公民館のB談話室の出来事、眼科医の目のないヤマネのぬいぐるみの話、様々な人におばあちゃんに似ているといわれる女性の様々なおばあちゃん探しの話、葉きり蟻の調査に来た日本人との交流の話など、詳解はさけるが、ここまで、ある種の妄想を膨らますことの出来るとは…すごいな。この作者の作品は、イメージが鮮明で絵画的である。したがって、映画的の原作としてもいけると思う。ハリウッド的じゃあないけど、ドラマツルギーがある。面白かった。余韻がさざ波のように残るな。

BSでやっていた「内部被爆~チェルノブイリからの報告」。

内部被爆の研究は、おそらく政治的な要因もあり、因果関係、その影響、その治療法などは、ほとんどというかまったくというかわかっていない。そこに迫ろうとする日本人の若き学者の奮闘と、その現実が紹介され、もはや世界は変わらなければならないことを強く感じた。

彼は、強制立ち退き区域から少しはずれて、住民が住み続けている村に注目し、そこの皆が食べているものを分析し、放射性セシウムの値を測定し、仮説を必死に探し続ける。

この村では、森できのこを採集し、皆、食べ続けている。

その森は26年たった今も、畑よりも町よりも高濃度の放射性セシウムが残っている。森の循環が土―木―葉―土で繰り返しており、むしろ純度が高まって、きのこに蓄積されているということである。これを、食べている30歳代のご夫婦から基準値の3倍を超える放射性セシウムが検出され、そのお子さんたちも決して安全といえる数値ではない。告知をいかなる心境で聞いたのか…心が痛む。

この村の医療センターの医師の感覚では、事故以降、慢性疲労症状と心臓病の増加が、3倍以上だということだ。日本でかつてあった原爆後の「原爆ぶらぶら病」の症例を、当時の医師が報告する。

おそらく、つかんでいる事実で、ショッキングな事例は伏せてあるのだろう。

でもその事実は、充分予想される。

どうも、細胞の中のミトコンドリアの代謝の働きによくない影響があるという報告がなされる。でも、まだ証明できない。したがって、治験も治療も出来ない…

これは現実の話であり、身近な話である。どうしよう?なかなか重い…。しかし…。

最後、ジョンリーフッカーの「boom boom」。

今年はもう渋滞がひどくて、馬飼大橋渡るのにこんなに苦労するのは初めてだ。後部座席で、takuがギターの練習を始めた。

CDに合わせて弾くように指示。

こいつらに、ギターブギのスタイルを吹き込んだらどうなるかな?と思って、ジョンリーフッカーの「boom boom」をかけてみた。ダッカダッカというリズムに、ワンコードで対応というスタイル。ずっと続けていると、すごい酩酊感があるグルーヴになる。俺はすぐ対応する体になってしまった。ライブとか裏西校祭でやってみろといったら、おもしろがってたけど、まだまだ無理だな…

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コメント

出し惜しみませんねェ。
一番食いつきたくなったのが「裏西校祭」って言葉なんですけど気になるな〜。
それにしても親子で裏っちゅう文字がよく似合いますね。
読書はイイ!お互い目がイカレる前にいっぱい本を読んでおきましょう

ほんと読書は、いいね。時間がもっと欲しい。裏西祭はね、今年はムジカでライブやったらしい。五組ぐらいバンドが出たらしいが、?(ToT)だったらしい。こういうところでタバコなんか吸って一網打尽になって出場停止になったりしてね。
また告知しますが、ビーネームの24日7時からムジカのライブ、親子いっしょにどうですか?

ほんと、一気に書きましたねえ。私なら3日に分けて書いて、3日分先付けの公開予約にしておくところです。
娘が山野の大学ビッグバンドジャズフェスから戻ってきました。小学校から一緒の先輩が最優秀ソリストを受賞したと喜んでいました。春学期の再試が6教科もあるらしく、大学ジャズは封印して、自分らのバンドだけに活動を減らすと言っていました。

約束通り覗きにきました(^_^)/~
いいですねえ、大人のブログって感じ。
多面体ですねえ、先輩っ( ´艸`)プププ

sino師匠、今tetuと二人で飲んでました。今日はリハーサルでした。もうしばらく奴とバンド続けますわ。やつをおじさんの主張につき合わせてしまいました。奴のベースラインは相変わらず最高だぜ。娘さんのバンド見てみたいなあ。jazz系すか?

ラム様、いよいよきましたな。わが方、ちぢにみだるる多面体です。ネタはまだまだ続くよ。コメントくださいね。ラムページも教えなさい。

夜更かしついでに。。。
無垢な子供たちの姿を綴っております。身を清めてからご覧ください!crying

みたよ。写真の自己防衛はしょうがないことですね。blogぜひ続けてください。いいね。よります。
瀬戸西ラグビー部のページも見てやってください。7番が二男です。みんなゴリラ化してきた。
マイドラマーのページがosamu君のページです。

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