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2011年8月18日 (木)

俺たちと虫

夜の雑木林の妖しい楽しさは、ちょっと忘れられないなあ。というか機会があれば、今でもいっているし。

クヌギの木で、昼のうちに目をつけていた、適度な日陰具合、風通しがまあまああり、苔、蟻はついていなくて、樹液の噴出が多いもの、ポイントが見えにくいもの、こんなような木の場所をいくつか頭に入れて、現地へ出かけるのだ。なじみのところだったら一目散に出かける。

怖いは怖いんだよ。俺が小学生の時、縄張りにしていた雑木林は、精神病院の中の広大な土地で、今思うと関東ローム層の段差が生じている複雑な地形のポイントだった。

鉄格子のはまった病室あり、死体があったとうわさされる防空壕あり、ときどき入院患者の悲鳴やけたたましい笑い声がする、昼尚怖いポイントだった。

しまいには慣れてあまり恐怖はなかったものの、塀をよじ登ってこえるので、いつガードマンに見つかって怒られるか、そっちの心配があった。

まあガキだったので深夜は無理だったけれど、夏休み、薄暮時分からとっぷりとした暮れなずみまでは、よく行ったものだったね。

最大の狙いは、ノコギリクワガタのオス。牙が雄牛のように湾曲し、なるべく赤銅色で、無傷な奴。これだ。カブトムシは、実はあまり珍重されない。立ち居振る舞いがどうも下品でね。

懐中電灯の光彩が樹液の出ているポイントを照らす時の期待感、そして、狙いのものがいた時の高揚感、いなかった時の残念感とつぎだ!つぎだ!という気持ちを切り替えていく心の動き、少年には人生のシミュレーションとして、とても大事だったと思う。

光彩の中の昆虫たちは、その動きの早さ、荒々しさ、利巧さ、まさに野性の世界で、一度捕獲して、飼育されている水槽の中のものとは、明らかに動きが違う。見とれてしまうほど、優美だったなあ。

青かなぶんや白点花むぐり、雀蜂や森ごきぶり、けしきすい、たては蝶や蛾の類に混じり、大きなノコギリクワガタのオスが、最も樹液の出のいい中央位置を占拠し、寄るものを追い払い、闘い、オレンジの色の舌を使って、樹液をむさぼっている。さて、この位置ならどうするか?

捕獲の際は、もっとも注意を要した。

網を使うか、蹴って落とすか、木によじ登るか、肩車でいくか。昼のうちに考えていた作戦で挑む。失敗は許されない気分だ。慎重にいかないと、気がつかれて逃げられる。ボロッと落ちて逃げられたら万事休すだ。

基本は手づかみだ。次善の策は捕虫網、最後の手段は蹴り落とす。

「ぼくもいく!」と必死についてきた弟を肩車して、手づかみにするのが、俺ら兄弟の必殺技であった。

よし、捕ったどー!

今日の獲物は、ノコオス4(うちサイノコ1) ノコブタ5 コクワオス7 コクワブタ3 カブト1 カブタ2 かあ。

まあまあ大漁だった。

ちなみにブタとはメスのことですが、他意はありません。カブトムシのメスは省略してカブタ。

ノコはノコギリクワガタの略である。ノコギリクワガタは幼虫時代の栄養状態で、牙の形状が大きく変わる。小さいものは、牙がまっすぐで、本当に鋸のような形をしたものから、その中間のような連続変化があって、個体差が大きいのだ。俺たちは、小さいものをサイカジと呼んでいた。中間の奴はサイノコ。俺はけっこうサイカジが好きだったね。小さいくせに気性が荒い。でも負けてばっかり…そんな相撲取りがいたような…

コクワはコクワガタの略。こいつは長生きする。うまくすれば、冬を越える。今年こそ越冬飼育に成功するぞー!

こんな感じかな。

ではどう分配するかだ。

俺たちのルールでは、第一順位は最初に触れたものだ。次は第一発見者。

この順位を考慮し、年長者が決める。

すべては、ノコギリクワガタのオスが基準で、その他は、比較考慮する際のオプションで、俺の弟はミソッカスで分配対象にはならないが、コクワのつがいやカブタは与えられる。

大喜びだったね。

どうだい。すげえ民主主義的でしょう!

よし明日、学校へ持っていって自慢だ。ライバルのYもまた、もって来るだろう。

今日捕った、この真っ赤なこいつで、奴のノコと対決だ。こいつに最大名跡のダンジュウロウの名をさずける。なぜかおれたち仲間内は歌舞伎役者の名をつけてたなあ。そうだ、市川君という子がいて、ばあちゃんがつけたんだ!おもしろいので、そのばあちゃんに名をつけてもらっていた。歌舞伎ファンだったんだ。葬式も覚えている…

思い出してきたぞ。

俺の精神性にすごく影響を与えた経験のような気がしてきた…

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コメント

ますます表現に磨きがかかってきていますね。
そうなんだ。メスはブタっていうんだ。初めて知りましたよ。
友達が捕ってきた翌日コクワのつがいやカブタを貰えたりしてた僕はミソッカスだった訳ですね。いや連れていってももらえないので戦力外で弟君以下だったかも・・。

俺の小学校の頃は、夏は、虫取りと三角ベース、冬は長馬と三角ベースでした。夏が早く来てほしくて、畳の上でクロールしてましたね。

本日の本文を一読すれば、3句や4句できますね。虫の表情がいきいきしていますもの。
うちも妹が虫好きで、大変でした。そういえば、亨栄高校の前にクワガタ専門店がありました。10年ほど前の話ですけれど・・
 娘はビッグバンドでトランペット吹いています。大学バンドではコンテンポラリーな難解な曲ばかりやってましたよ、自分たちのバンドはアニソンのジャズアレンジなんかで万人受けするやつですね。

おお、うれしいっす!確かに俳句できそうですね。
sino家にも虫愛でる姫がおりましたか!俺は、姿かたちに均衡と節度を感じる日本の昆虫がいいと思ってます。ここは自然をうたう文学ですかな。
虫シリーズまだまだネタがあるよ。展開しようかな。
娘さんはjazz系のペッターですか!ふむふむ。ビッグバンドからビバップへ行きそうだな。マイルスデービスと格闘してそうだな。

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